天然型アブシジン酸によるダイコンの抽だい抑制効果
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
天然型アブシジン酸 (S-ABA) のダイコンの抽だい抑制効果について種子処理方法および品種間差について検討した。<BR>1.S-ABA種子処理方法の検討。品種は耐病総太りを用い, 乾燥種子および吸水種子にS-ABA溶液を24あるいは48時間浸漬処理した後播種し, 8°C,10日あるいは2Q日間の低温条件下で栽培し, その後18°-22°Cの高温条件に移し栽培を続けた。その結果, 1000ppm, 24時間の種子の浸漬処理でほぼ完全に抽だいを抑制する効果が認められた。しかし, 100ppm処理での効果は不充分であった。<BR>2.処理種子の長期保存。耐病総太りを用い, 24時間浸漬処理した種子をよく風乾し, 冷蔵庫 (4°C)に保存した。5ヶ月間保存した後, 1の方法に従って栽培したところ, 250~1000ppmのS-ABAによる抽だい抑制効果は保持されていた。その際S-ABAの濃度が高くなる程その抑制効果は明瞭であった。<BR>3.品種間差。8品種のダイコンについて, 催芽種子春化時または植物体春化時に, S-ABAを処理して,抽だい抑制効果の品種による差異の有無を検討した。催芽種子処理試験二催芽種子を50ppmのS-ABAを含むシャーレに入れ20日間5°Cで低温処理を行った後播種し温室内で栽培した。葉面散布処理試験:11日間栽培した第一葉期の苗を8°C, 14日間低温処理し,その期間中3回の250ppmのS-ABA散布処理を行った。その後温室に移し栽培を続けた。<BR>S-ABAの種子処理および幼植物の散布処理は抽だい•開花を抑制し, 種子処理の方が幼植物の葉面散布処理よりも高い抑制効果を示した。また, 抑制効果の程度は品種によって違いが見られ, 種子処理で感受性の高い品種, 例えば耐病総太り, 夏みの早生3号は葉面散布処理でも高い感受性を示した。他方, 和歌山やかいわれ大根の品種においては両処理において低い感受性を示した。以上の結果より, 多くのダイコンの品種でS-ABAを播種前に種子処理することにより, 抽だいの抑制効果を期待することができるものと思われる。
著者
-
白井 真
東レ(株)ケミカル研究所
-
禿 泰雄
東レ(株)ケミカル研究所
-
小川 正巳
三共(株)総合研究所
-
天笠 正
三共(株)
-
天笠 正
三共(株)総合研究所
-
小川 正巳
三共(株)農薬研究所
-
天笠 正
三共(株)農薬研究所
関連論文
- (S)-(+)-アブシジン酸がタマネギ(Allium cepa L.)の物質生産に及ぼす影響
- 天然型アブシジン酸の種子処理による発芽と生育促進の作用性と実用法方の検討
- 天然型アブシジン酸の種子処理による発芽,生育および収穫量におよぼす効果
- 28 天然型アブシジン酸の種子処理による生育促進と増収効果
- 25 天然型光学活性アブシジン酸が花芽分化数に及ぼす効果
- 24.Botrytis cinereaの生産する光学活性Abscisic Acidについて (第25回大会研究発表抄録)
- 24 Botrytis cinereaの生産する光学活性Abscisic Acidについて
- 13 (S)-abscisic acid umbelliferoneエステルの調整と、その高い持続活性
- 25 ダイコンの抽苔・開花におよぼす天然型アブシジン酸の影響(第2報)
- 26.ダイコンの抽苔・開花におよぼす天然型アブシジン酸の影響 (第26回大会研究発表抄録)
- 26 ダイコンの抽苔・開花におよぼす天然型アブシジン酸の影響
- B-29 アミノオキシ酢酸誘導体のフェニルアラニンアンモニアリアーゼ阻害作用(第2報)
- 赤米の生物学
- 2B-19 イネ苗の茎葉伸長におけるトリアジン系化合物とジベレリンの相乗作用について
- アミノオキシ酢酸類縁化合物の植物生理作用
- 54 アミノオキシ酢酸誘導体のフェニルアラニンアンモニアリアーゼ阻害作用(第3報)
- C2-71 アミノオキシ酢酸誘導体のフェニルアラニンアンモニアリアーゼ阻害作用
- 天然型アブシジン酸によるダイコンの抽だい抑制効果