二十世紀梨の柚肌病に関する研究(第3報) : 柚肌発生の解部学的考察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
二十世紀梨の柚肌病について,その発生経過を組織解剖学的に観察した。その結果は次の通りである。 1.柚肌発生樹に着いた果実では,既に7月下旬〜8月上旬に,果肉内に維管束に近接して空隙を生じ,その空隙内部には細胞の分裂異常増生による乳頭状の突起が観察され,また維管束末端の果肉細胞に木栓化が認められた。 2.収穫時の柚肌果では石細胞の発達が著しく,特に果心と外果皮に近い果肉に多く,また果皮の硬化部直下では,維管束末端の果肉柔細胞に木栓質が甚だしく発達し,その附近には多量の澱粉が遺存した。 3.従つて,柚肌果の果皮に凹凸を生ずるのは,以上のような障害部の発育が遅れて健全部の果肉の肥大が行われるためと思われる。また,柚肌果の果肉硬化の現象は,石細胞の発達と共に果肉柔細胞の全面的木栓化によるものと考えられた。 4.正常樹と雖も, 6月下旬〜7月下旬に人為的に土壌の乾燥処理を行うと,果肉内部に柚肌発生樹の果実におけると同様な組織変化を生じ,収穫時に柚肌果を認めた。 5.健全果の果肉内に稀にspotとして認められる木,栓質(Cork spot)は,乾燥した年に多量に発生する傾向にあり,また柚肌果の果皮の凹凸とは直接の関係は少いようであるが,柚肌果には多量に存在した。
- 園芸学会の論文