秋キク品種の感光性, 感温性について (第1報)
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概要
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(1) 秋キクの各品種の感温性及び感光性を知つて, 栽培上の参考に資せんとして, 1952年にはまず代表的な17品種を供試した。試験方法は, 標高 360m の長野と, 同じく 850m の長村の二ケ所で, 標高差を利用して気温の相異するようにし, 5月5日定植して7月1日より一般遮光方法によつて, 日長を10時間に制限した短日20日間, 30日間夫々継続した両短日区と, 無処理の自然日長区の3区を設けた。(2) 生育調査結果では, 定植前, 処理前に於ける草丈, 葉枚数とでは栽培地, 処理区, 品種間に差はみられなかつた。(3) 同じ秋キクも, 立波, 信濃川, 白馬の3品種は, 遮光有無にかかわらず花芽分化し, 日長条件には影響されない。一方その他の14品種は, 日長時間が14時間30分以下の日長条件となると, 花芽形成をするが, 品種間に遅速があり, 新東亜, ピンク東亜, 新月友, みのり, の4品種は比較的早い品種群のようである。(4) 花芽の発育は, 花芽形成のときと同様で立波, 信濃川, 白馬の3品種は, 温度条件のみに支配され, 気温の低い地帯では開花期は遅れる。一方他の14品種は, 13時間30分以下の日長時間で花芽の発育 stage は進むが, この場合ただ日長条件のみならず温度条件の影響もうけるようである。即ち新東亜, ピンク東亜, 新月友, みのりの4品種は比較的高温状態でも, 短日条件下であれば花芽は発育する。また, 岡山平和, ラスター, H. コイド, 白サギ, むらくも, 玉織姫, 国の光, 紅潮, 紅秋, 初がすみ, の10品種は, 短日条件でも高温状態では, 花芽の発育は緩慢となる。(5) 短日20日程度では, 花芽の不完全分化, いわゆる柳芽発生が多く, 実用的にこの程度の短期間の遮光で順調に開花する品種は見当らなかつた。短期短日条件下では花芽発育程度の如何によつて柳芽発生も相異し, この花芽の第二相の発育も, 日長及び温度条件で左右される。(6) 秋キクの品種の早晩性は, 花芽分化及び開花が, 温度条件にのみ左右される品種群では, 栽培地の気温に支配される。一方花芽分化, 開化が日長及び温度条件に左右される品種群では, 短日条件による花芽分化の早晩によるものでなく, 分化後開花までの所要日数で決るようである。また, 遮光栽培には所要期間のなるべく短い品種を, とり入れた方が合理的のようである。(7) 供試品種をその感温性及び感光性で分類するとつぎのようになるであろう。I 温度型品種: 花芽分化及び開花が, 日長条件に影響をうけないで, 温度条件にのみ支配される品種群, 立波, 信濃川, 白馬。II 日長型品種: 短日下 (花芽分化=14.5時間以下, 花芽発育=13.5時間) で, 花芽分化, 開花の行われる品種群。(1) 日長型であつて, この場合比較的高温条件でも花芽が発育し, 開花期が促進される品種。新東亜, ピンク東亜, みのり, 新月友。(2) 日長型であつて, この場合比較的高温条件だと花芽の発育は緩慢となつて, 開花期が遅延する品種。岡山平和, ラスター, H. コイド, 白サギ, むらくも, 初がすみ, 玉織姫, 国の光, 紅潮, 紅秋。