草苺品種の地域適應性に關する研究 (第1報) : 花芽分化期頃から異つた気象条件に栽植した場合の花房及び花芽の形成並びに発育について
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概要
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(1) 草苺品種の地域適応性の機構を知るために, 生態の異なると考えられたみすず2号 (1〜54), 春光1号 (2〜5), 御牧ヶ原1号(M〜1)の3品種を用い, 長野に於て育苗した材料を長野(標高360m)の露地区, フレーム区, 菅平(1390m), 北御牧(650m), 飯山(313m)に植付け, 花房の形成増加, 花芽の分化発育の過程を追跡した。(2) 草苺は品種により主枝に着生する側枝数が異なり, 花房数の品種間差異の一因をなす。(3) 第一次分枝の何%がその生長点に花房を形成するかは品種によつて異なり, しかもその差の傾向は地域によつて変らないようであつた。又, 側枝数の多い品種必らずしもその%が高くない。(4) 花房を形成している側枝はある程度以上に発育しており, 且つ発育の良否に品種間差異があつて, 此の差異の傾向は地域によつて変らなかつた。(5) 第1次分枝の花房形成は主枝頂花房のそれに続いて急速に行われ, しかもその速さ及び様相は品種によつて異なり, 且つその差異の傾向は地域によつて変らなかつた。(6) 側花房形成の様相は複雑で, しかもかなり高次の側枝にまで形成されるが, 高寒冷地では比較的単純である。(7) 高次の側花房の形成は主として春の気温上昇期に急速に行われる。(8) 株当り花房数は品種によつて異なり, その傾向は地域によつて変りにくいようであつた。しかし, 高寒冷地では平暖地に比べ, 花房数はかなり少くなる。(9) ランナー発生数には品種間差異が見られたが, 地域間の傾向は明らかでなかつた。(10) 1花房当り平均花芽数にも品種間差異が認められたが, 地域間の差はむしろ栄養条件によると思われた。(11) 主枝頂花芽の分化期は品種によつて異なり, 品種の感温性の程度を示すと思われる。(12) 株当り総花芽数は花房数の多いものに多い。(13) 花芽分化, 花房形成, それ等の増加, 発育等は品種, 地域を通じ, 5°C以下で停止し, 春の上昇期に10°C前後で再開され, 日長の影響は少いと思われた。(14) 品種によつて花芽の発育速度に差があり, 分化期の早い品種が速い傾向が見られ, 此の傾向は地域によつて変らなかつた。又開花期についても同様の傾向が見られたが, 高寒冷地では品種間のその差が短縮される。(15) 各品種いずれも小花芽にまで発育した花芽はその後座止することなく大花芽に発育し, 開花に至るものと思われる。此のことは各地域を通じて同様である。(16) 収量は花房数, 花芽数の多少と平行し, 又高寒冷地では収量が減少する。
- 園芸学会の論文