大根及び白菜類に於ける人爲同質四倍體に關する研究
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概要
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1. 新しい育種の紀材として多數品種の倍數體を育成し, その中から優良なものを選拔する手掛りとして大根及び菜類の四倍體の示す變異の樣相を報告するものである。2. 大根10品種, 白菜11品種, その他若干の菜類の人爲四倍體を材料として1946年より1望8年に亙つて發芽性 bull;生育速度•開花期及び稔性(自家及び他家授粉によう)を調査し, その對照二倍體からの變異を検討した。3. 發芽性について四倍體は二倍體に比しやゝ發芽歩合が低い傾向を示したが, その差は平均0.8乃至0.5%で僅少なものであつた。四倍體は品種によつて最高100%から最低34%までの變化を示した。4. 生育についての一指標として葉數を總計し, 平均を求めて各品種による四倍體と二倍體の葉數増加の傾向を調べたが, 一般に四倍體は二倍體に比し生育の遲延を示すか, 或は二倍體と同程度の生育を示したが, 二三の品種 (滿洲紅丸大根, 京城•辻田白菜等) にあつては逆に四倍體は生育の旺盛を示した。5. 開花期は一般に四倍體は二倍體に比して遲れる傾向にあつたが, 年次的な變化が大きく, 同一品種にあつても四倍體が二倍體より早く開花する年と遲く開花する年などがあつて一定の關係が見られない事があつた。然し, 開花の遲速は凡そ品種固有のものであり, 年次に拘らず, 四倍體が二倍體より早く開花するものと, 遲く開花するものとがあり, 早いものでは滿洲紅丸大根でその差が5乃至8日, 遲いものでは包頭連白菜が11乃至15日の差を示したことが注目された。6. 稔性について自然放任下に於ける結實性を檢したところ, 四倍體の一角當りの完全種子數は, 大根に於ては最高は白首宮重の4.04粒, 最少は美濃早生の2.40粒, 白菜にあつては最大は縮緬の10.98粒, 最少は花心の2.28粒で, 二倍體は四倍體の1.5乃至2.5倍の稔實數を示した。種子の重量は, 四倍體は二倍體より重く略々1.5倍を示した。7. 自家及び他家授粉によつて稔性が檢討されたが, 四倍體と二倍體との間に相當の差異があり品種によつても一定の關係がなかつた。一般に四培體•二倍體其他家授粉の方が稔度が高かつたが, 二三の品種 (芝罘•京城白菜等) では染色體倍加によつて自家稔度が増し, 他家稔度が減ずることが認められた。8. 尚, 開花後授粉, 開花當日授粉, 蕾授粉が比較されたが, 蕾授粉にあつては四倍體は二倍體に比し, 自家受精力が減じ, 逆に開花授粉によつて自家受精力が増した。他家授粉では, 開花授粉及び蕾授粉に於て四倍體は二倍體より劣り, 開花1日後授粉に於て優れていた。
- 園芸学会の論文