矢ノ根介殼蟲に對する硫酸亞鉛加用石灰硫黄合劑の效果 (第2報)
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概要
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1. 矢ノ根介殼蟲の第3囘發生期に於ける硫酸亞鉛加用石灰硫黄合劑の效果は第1, 2囘發生期に於けるそれと全く同樣で該藥劑は明らかに幼蟲に對する防除效果を有し, 蟲の發育を抑壓する作用を有する。2. 矢ノ根介殼蟲越冬成蟲に對する該藥劑の殺蟲作用は遲效的で而も完全なる殺蟲效果を期待し得ない。3. 該藥劑は葉のPH價を變化する。即ち藥劑撒布後10日迄はPH價は急激に上昇して中性に接近するもそれ以後は漸次下降して撤布2ケ月後には略撒布前の値に還元される。4. 細胞液のPH價と蟲の發生との間に密接なる關係を有し, PH價の高い間は蟲の發生を認めないが, その値が處理前の値に還元されるに及び蟲は漸次増加の傾向を示す。5. 該藥劑が細胞液のPHを變化せしめるのは石灰硫黄合劑及び硫酸亞鉛兩者の反應中に行われ, その原因は組織内滲透の硫黄によるものと考へる。6. 幼蟲に對する殺蟲作用は葉の組織内に滲透分布する硫黄による。而してその作用は幼蟲の發育期即ち換言すれば蟲の吸收口の長さと大なる關係を有する。7. 硫黄の組織内滲透に際しては亞鉛が Carrier の役割をなすものと思推する。
- 園芸学会の論文