和梨果實の果點の發達經過に就いて
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概要
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果點の發達經過を二十世紀, 太白, 幸藏, 赤穗, 眞鍮の6品種を材料として5月下旬より8月下旬に至る約3ヶ月間にわたり, 略5日及10日毎に測定し, 各品種の差異を追究した。尚これと同時に果實の發育をも測定し, 果實の發育と果點發達との關係をも比較考察した。その結果大要次の諸點を明かにすることを得た。1. 果點の大さは觀察初期に於て小なる緑色種が成熟果に於ても最も小であり, 銹褐色が最も大で, 中間色種がその中間の大さを示してゐる。從つて果點のコルク化の最も遲い緑色種の果點が小さく, コルク化の早い銹褐色種の果點が最も大きくなつてゐる。2. 果點の發達經過は7月上旬を境とする2つの週期に分ち得るものの如くであ互, 第1週期は所謂果點發達の中期で果點コルク形成の旺盛なる時期に相當してゐる。而して果點の大さは前期即ち5月下旬より6月下旬までの間に顯著なる發達を示すものと比較的後期に大なる發達を示すものとがある。長十郎及幸藏の如きは前者の例であり, 赤穗及眞鍮は後者の例に屬し, 概して7月中下旬に大なる發達を示してゐる。緑色種たる二十世紀及太白は前期及後期共に略同樣なる發達を示す。3. 果點の發達に對して氣象要素の影響を受けることの大なる點に於て類似してゐる長十郎, 赤穗は斯る果點發達の季節的消長に異なるものがあり, これは品種の特性と認めらるべきものである。4. 果實の發育經過と果點の發達經過とは必ずしも平行的關係を示ものではなく, 果實の發育は7月上旬までは極めて緩慢であり, その後に急速なる發育を示して居り, その間に品種による差異を認めることが困難であるが, 果點の發達は上述の如き顯著なる品種間差異を表してゐる。5. 以上の如き測定成績は和梨果實の果點の發達に關する生理的解説の上に極めて貴重なる資料を與へると共に, 果實の發育に伴ふ生理機能の研究の上にも果點の發達に關する知見を加へる必要のあること教へるものと思はれる。
- 園芸学会の論文