甲府市における都市内人口移動のシミュレーション分析
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概要
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本研究は, 甲府市における1980年4月の都市内人口移動に関して, 転居者の移動パターンを明らかにし, その結果をシミュレーション・プロセスに反映させることによって, ランダムな移動形態から現実の移動形態への接近を試みた。甲府市における転居者の移動パターンには, 二つの顕著な流動が認められた。その一つは, 20歳代前半の若年層による単身移動であり, 甲府市北部の比較的狭い地域内で発生・吸収する。いまひとつは, 20歳代後半から30歳代の夫婦とその子供による家族移動であり, 甲府市南部の住宅機会に富む地区へ一方的に流入する。距離の摩擦効果として表現した人口移動の全域的成分に加えて, 都市内単位地区の人口数または住宅機会量による効果を単位地区に固有の局地的成分としてシミュレーション・プロセスに投入した。また, 学生寮の移転にともなう強制的移動を再現し, 分析対象期間と入居時期が重なった住宅団地の住宅機会量を推定した。その結果, 借家居住世帯数によって住宅機会量を表わしたときに, 現実の移動結果への接近度からみて, 満足し得るシミュレーション結果を得ることができた。甲府市の都市内における移動者の行動は, ランダムに生起するのではなく, また距離摩擦によって決定されてしまうものでもない。移動と距離との間にみられる強い相関関係は間接的なものにすぎない。都市内人口移動を直接に規定するものは都市内単位地区に固有の局地的成分であり, それは移動者を吸引する住宅機会の存在である。
- 東北地理学会の論文