東京都江戸川区における緑地空間の変遷と分布特性
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概要
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本稿は, 東京都江戸川区を事例として, 緑地空間を地理学的にとらえ, その変遷および分布特性の分析を試みたものである。その結果, 次の諸点が明らかになった。1. 江戸川区の生産緑地は, 都市化の方向に一致して, 北部と西部の既成市街地や主要交通路周辺から次第に失われ, 現在では, 区の東部と中部に主に畑地として残存し, 軟弱野菜を中心とする近郊農業が営まれている。これに対し, 公園緑地の整備過程は, 都市化に対応し, 既成市街地と主要交通路を中心に拡散現象が認められ, 特に児童遊園はこの傾向が強い。2. 生産緑地率は, 既成市街地からの距離が増すごとに連続的に高まる傾向があり, また, 人口との関係にもほぼ負の相関が認められ, 生産緑地率が都市化の段階を把握する一つの指標となる可能性を意味している。公園緑地率は公園の利用圏を反映してか非連続的な分布を示している。3. 江戸川区の北部と西部の既成市街地は建ぺい空間率が極めて高く, 緑地空間が著しく欠乏している。一方, 土地区画整理事業により開発された区南部は生産緑地率は低いが, 公園緑地率が高い。都市化の中で新たな緑地空間が創造された地域である。さらに, 区の東部から中部にかけては生産緑地率が高いが, 公園緑地率, 建ぺい空間率がともに低く, 江戸川区の中でも最も都市化の遅れた地域といえる。しかしながら, 現在ミニ開発が進み, 十分な緑地空間の創造が危ぶまれている。