長崎市における高層建築物の立体的機能分化
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概要
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従来行われてきた都市機能の立体的機能分化の研究には, (1) 対象地域をCBD内に限定している, (2) 地域による機能分化の違いをみる際に, 都心部と都心部以外, 核心部と核心部以外といった2地域にしか区分していない, (3) 単一の機能しか存在しない建築物も含めて考えている, (4) 各機能の占有率を建築物の棟数あるいは事業所数で算出しているという4つの問題があった。本稿ではこれらの問題点を修正し, 長崎市を例にとり分析を試みた。対象地域はCBD内だけでなく路線価の設定されている地域全体とした。対象建築物は, 対象地域内に立地する6階建以上の高層建築物で, 複数の機能が存在する建築物とした。分析においては, メッシュによる地域区分と, 対最高路線価比率による地域区分を用い, 床面積より機能占有率を求めた。その結果, 次のことが明らかになった。(1) 鈴木 (1979) の述べた半球状の機能分化は長崎市でもみられた。しかし, それは地形的条件のためメッシュを用いた分析ではやや明瞭さに欠け, 路線価を地域区分の指標に用いることによってより明瞭に現れた。(2) 機能の分布も鈴木の述べたこととほぼ一致するが, 高路線価地点の低層階では複数の都心部指向型機能が存在することはなく, 機能はむしろ小売機能に限定される。すなわち, 最高路線価地点の低層階を中心として, 小売機能のみ→複数の都心部指向型機能→都心部指向型機能と都心周辺部指向型機能が混在→居住機能のみ, といった機能分化を示す。
- 東北地理学会の論文