他羅瑪琳池周辺の陸水学的・生物学的概況
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概要
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他羅瑪琳池 (大鬼湖) は, 交通の極めて不便な台湾南部中央山脈稜線上の海抜2180mの高地にあり, 長径710m, 短径約230mにすぎないが, 深度は34mと大きく, 台湾の天然湖水中最深と思われる。湖水周辺はタイワンツガを主とする針葉樹の第一層, 広葉常緑樹のカシ類・シャクナゲ類などの第二・第三層, そして地表面は特に発達したシダ類層に覆わわる原生林である。そこには管束植物58科120種の生育が見られ, また生息する鳥類も23科62の種および亜種を数えた。湖岸は汀線まで樹木に覆われ, また急崖状に深度をますので水生植物や汀線付近の植物はほとんどない。調査時の1986年10月には, 湖水に直接出入する流水はなく, 湖水は成層しており, 深度10〜15mが変水層になり, 水深を増す毎に水温・溶存酸素量・COD値は急低下し, pH値・SiO2量・鉄分量なども変化する。溶存成分量は一般にごく少なく, 特にリン酸は全く検出できなかった。窒素の各態の化合物も少なく, 湖水は明らかに貧栄養的で, プランクトン量もわずかであったが, 湖水西北岸近くの浅い水域にはケンミジンコの1種 Eudiaptomus formosus のみが大繁殖していた。両生類は1種生息するが, 魚類の生息は確認できなかった。
著者
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大津 高
山形大学理学部生物学科
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呂 勝由
台湾省林業試験場
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加藤 武雄
元・山形大学教育学部
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張 萬福
東海大学 (台中) 環境科技研究中心
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大竹 直
山形大学理学部
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蔡 百峻
中華民国自然生態保育協会
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大津 高
山形大学理学部