スコポラミン生合成とその発現制御
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概要
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植物由来の二次代謝産物, 特に有用化合物を組織・細胞培養法を用いて大量生産しようとする試みは植物組織培養法が注目を集め始めた70年代初期から日本, ドイツなどの国々で盛んに行なわれている. 最近までは未分化の細胞培養系を用いる研究が主流であったが, 培養細胞で効率良く産生される化合物はむしろ稀であること, さらに80年代後半になって根の器官培養法が見直されるに至り分化組織を用いた生産系が好んで利用されるようになった. こうした研究動向は取りも直さず多くの二次代謝産物においては形態的分化と生化学的代謝経路の発現が密接な関係にあることを我々に再認識させる結果となり, 代謝経路の組織・細胞特異的発現制御機構を分子レベルで解明することがこれからの二次代謝研究の中心課題となるであろうと予想できる. 二次代謝の発現制御に関する分子生物学的研究はその遺伝学的バックグランドの広さからトウモロコシ等のアントシアニン生合成において最も進んでおり, 生合成酵素の構造遺伝子のみならず, 一群の生合成遺伝子の組織・細胞特異的発現を制御する遺伝子についても解析が進んでいる. 他の二次代謝産物の生合成に関しては最近ようやく幾つかの生合成酵素の遺伝子が単離され, その発現制御が分子レベルで研究され始めたばかりである. 本ミニ・レビューではその中でも比較的研究の進んでいるトロパン系のアルカロイドの生合成に関する我々の研究室における研究成果をいくつか紹介する.
- 日本植物細胞分子生物学会の論文