胃全摘術後のグルカゴン分泌動態に関する研究
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概要
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胃切除後における耐糖能異常発現機序の一端をあきらかにする目的で, 以下の検討をした.1) 臨床的研究: 胃全摘症例について術前後で経口ブドウ糖負荷試験 (OGTT) を, 術前症例に十二指腸内ブドウ糖負荷試験 (IDGTT) を施行し, 血糖, インスリン, グルカゴンを測定した. 胃全摘後OGTT時, インスリン高反応にかかわらず血糖曲線は糖尿病型を呈し, かつ, グルカゴン過剰反応が認められた. また, 胃全摘後のグルカゴン反応は, 術前症例のIDGTT時と比較しても, 一層あきらかな高反応であつた.2) 実験的研究: イヌを使用し, a) 術前OGTT群, b) 全幹迷走神経切断 (TV) 前IDGTT群, c) TV後IDGTT群, d) 胃全摘後OGTT群の4群でグルカゴン反応について検討したところ, ヒトと同様, 胃全摘後OGTT群はIDGTT群にくらべて著明な高反応を示した. 一方, IDGTT群におけるグルカゴン反応は, 迷切によりあきらかな影響を受けなかつた. 以上の結果から, 胃全摘後の耐糖能低下にグルカゴンが関与する可能性が考えられた. また, 胃全摘後OGTT時におけるグルカゴン過剰反応には, 単にブドウ糖が急速に腸管内へ流入するためばかりでなく, 胃そのものの除去が関与する可能性が示された.