ラット肝グリコーゲン代謝に及ぼすPCPの影響
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概要
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農薬ペンタクロルフェノール(PCP)の肝中グリコーゲン代謝に及ぼす影響をラットを用いて検討した。その結果,PCPの単一経口投与(120mg/kg体重)を行うと,投与後3時間において,血糖の上昇を伴う肝グリコーゲン量の有意な減少が観察された。ところが投与後24時間においては,対照群の約10倍に及ぶ肝グリコーゲンの増加が認められた。そこで生体内において肝グリコーゲン量の調節に直接関与している酵素に対するPCPの作用を調べたところ,投与直後の1∼2時間においてホスホリラーゼ活性の有意な上昇がみられた。これに対して,投与後24時間においては肝グリコーゲン合成酵素(Total及びI型)活性が著明に上昇した。このことから,本実験で明らかにされた投与初期にみられる過血糖を伴う肝グリコーゲン量の減少はホスホリラーゼ活性の促進により,又投与後期に認められた著明な肝グリコーゲン量の蓄積はPCPによる肝グリコーゲン合成酵素活性の促進に基づく現象と考えられた。更に糖代謝との関連が知られている副腎機能に及ぼすPCPの影響を調べた。PCP投与後3時間において,副腎アスコルビン酸量の減少と血清コルチコステロン濃度の上昇が観察された。この事実は副腎皮質ホルモンが,PCP投与によってみられた初期の反応に関与している可能性を示唆した。
- 日本衛生学会の論文