水道水中の重点汚濁物質 (priority pollutant) について-北九州市の例-
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概要
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最近米国環境保護庁 (U. S. EPA) は, 21種の業種について129種の重点汚濁物質 (priority pollutant) を挙げ, 排水の規制を設定した。この重点汚濁物質として13種の重金属 (Sb, As, Be, Cd, Cr, Cu, Pb, Hg, Ni, Se, Ag, Ta, Zn) シアン化物, アスベスト, および114の有機化合物が示されている。これらは発癌性, 変異原性, 染色体異常を示すことが知られている物質, それらと化学構造が類似している物質, 或いは産業廃水中に存在が考えられる物質で, 高濃度で毒性を示す物質から撰択されているという。著者らは, 北九州地方の種々の環境水中有機化合物の検索を行って来たが, 水道水 (給水栓水) についての資料をこの priority pollutant のリストと比較すると, 水道水に97種の有機物が検出されているが, そのうち20種が priority pollutant に該当する。この事実は, 都市周辺の水道原水が, これら化学物質による汚濁を受けていることを示すものであり, また現在の浄水処理では化学物質が除去出来ないことを示すものである。水中有機化合物に関心が向けられて来たが, 本邦においても, U. S. EPAが採用したような規制が必要であり, またこの目的のためには従来の水質指標 (BOD, COD) などでは充分でないので新しい指標の研究が必要である。