尿中ALA排泄量とクレアチニンの関係にもとずくスポット尿を用いた鉛暴露者のスクリーニング法
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概要
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ALA濃度のCreatおよびSG補正法は,希薄尿において尿量に伴なった補正とはならず,正しいALA排泄量を推定する手がかりとならないことが認められたので5次の様な知見にもとずいて鉛暴露者をスクリーニングするための判定図を作製した。一般正常人のスポット尿は,希薄尿から濃厚尿の間に,ALA濃度とCreat濃度が極めて高い正相関関係にあったが,鉛暴露者群は種々の程度の鉛暴露の影響によってALA排泄増加が加わり,両者の相関の程度が低下した。したがって,正常人から求めた両者の回帰直線からのCreat濃度に対応するALA実測値のズレを見て,鉛暴露者か否かが判定可能であると考えた。さらに,単一指標による判定誤差を少なくするために,ALA濃度対Creat濃度の関係に,ALA濃度対Pb-B濃度の関係を加味した境界線を設け,スクリーニングの精度を高める配慮をした。判定図は3つの範囲に分け,IはALA濃度対Creat濃度,Pb-B濃度の両面からみて非暴露者と判定される範囲,IIはALA濃度対Creat濃度からみて鉛暴露者とみなしうるが,Pb-B濃度との関連からみれば非暴露者と認められる中間範囲で,精検の対象とする。IIIはALA濃度対Creat濃度およびPb-B濃度からみて,鉛暴露者と判定される範囲である。したがって,スポット尿についてALA濃度とCreat濃度を測定し,Creat濃度に対応するALA濃度が判定図のどの範囲にあるかをみて,鉛暴露者か否かを判定する簡易で実用的なスクリーニング法である。
- 日本衛生学会の論文