残留性有機塩素化合物による人体及び食品の汚染とブリの汚染指標としての役割
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概要
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残留性の有機塩素系殺虫剤などによる人体と食品の汚染に関する若干の実態調査より,以下に記述する知見をえたほか,一般住民の汚染予測にあたり,ブリを指標とする方法を考案した。1) OCIの人体蓄積については,脂肪組織への分布が著明で,その蓄積性については,β-BHCとpp-DDEが同程度,dieldrinではやや低い傾向がみられた。2) 産婦の出産時さい帯血のβ-BHCとpp-DDEの濃度は,いずれも一様に母体血の約30%でいずれの場合も,さい帯血と母体血の濃度間に有意の相関性がみられた。3) 大型の回遊魚であるブリとマグロ及び近海魚のアジにみられるDDT・dieldrinの残留傾向は同様で,ブリ>アジ>マグロの順に蓄積性が認められ,脂質含量がその主要な因子として挙げられる。4) ブリの残留性有機塩素化合物は,成長に伴い,脂質含量とほぼ平行して増加すると推察されるほか,DDT・PCBの幼魚と成魚にみられる質的相違から,これらの代謝機能の高まることが示唆された。5) 81年の長崎で水揚げされた天然ブリの総DDT値が高かったのは,質的にも原体成分の比率が高いほかPCBsガスクロマトグラムパターンから,黒潮のDDT汚染レベルが高かったためと推察された。6) 生態系の視点からDDT汚染を考えると一般住民と海洋性魚類の間に,食物連鎖による濃縮が,脂質当りでは成立しているものと推察される。7) ブリに残留するPCBの天然産と養殖産の質的相違については,80年ではピークパターンに明瞭な差異がみられたものの,その後漸次接近する傾向が観察された。又,量的には同レベルであり,おおむね横這いに推移していた。8) ブリのDDT残留の推移については,83年に至って,質的量的に,減少の兆しが認められた。
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