人より分離せるH2O2産生菌に関する研究
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概要
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口腔内のH2O2産生菌に関する研究は肺炎双球菌についてのMcLeod (1922)等の報告以来数多い。柳沢(1959)等が仮性小児コレラ患児の糞便よりH2O2産生菌を始めて分離している。著者はKrausのBEB培地を用いて,人体における本菌の分布並びに分離菌の分類学的研究を行ない,次のごとき結論を得た。1. H2O2産生菌は口腔および腟内に常在する。特に経腟分娩の新生児口腔内にも高率に分離し得た。2. 胃内よりは口腔内での検出率の約50%に検出した。3. 健康成人の糞便からH2O2産生菌は検出されぬが,胃腸疾患を有する患者の糞便からは10∼30%内外に検出される。特に,閉塞性黄疽,仮性小児コレラ患児よりは高率に認める。4. 口腔および胃より分離せるH2O2産生菌は,Genus, Streptococcus (Bergys Manual)のmitis typeの菌種も含まれるが,一方胆汁耐性のStreptococcusが高率に存在し,腸内より分離せる菌株の多くは胆汁耐性である。5. 胆汁耐性の分離菌株の同定実験の結果,この菌株はStr. mitis, Enterococcusに相似する点があるが,相違する点も少なくない。しかし,Cowanの報告せるAerococcus viridansにかなり類似する。Lancefieldの群別分類ではD群に属さない。6. 本菌のH2O2産生にはO2の存在が必要であり,嫌気培養ではH2O2の前段階の産生物が蓄積される。7. 口腔内および消化管内より分離せる菌株が同一の生化学的性状を呈することより,これらは同一の菌種であると考える。8. 動物実験で分離菌の経口投与あるいは腸内注射により,これを糞便より常時検出することは出来なかったが,一過性に排泄されることがあり,また人からの分離実験より考察して,成人の正常な腸内細菌と認めることは出来ない。
- 日本衛生学会の論文