老人保健法による健診事業に関する研究 : 人口規模による市町村格差の解析
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概要
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老人保健法による健診受診率に影響を与える因子について市町村の人口規模による格差を明らかにするため,昭和60年5月に全国市区町村にアンケート調査を実施した。1) 2,645市区町村より回答が得られ,回収率は80.7%であった。2) 一般健康診査の精密診査の項目の実施状況をみると,法に定められた項目は人口規模の大きな自治体でよく実施されていたが,人口規模の小さな自治体では実施率がやや低く,市町村の財政事情や医療環境の違いが反映していると考えられた。3) 一般健康診査の自己負担なしの市町村の割合は,人口規模5万以上の自治体で最も高く,市町村の財政力による違いと考えられた。4) 健康診査の周知には,人口規模の大きな自治体では広報紙を利用し,人口規模の小さな自治体では地区組織を利用しており,人口規模による違いがみられた。5) 一般健康診査の結果の通知は,人口規模の小さな自治体では,約半数が複数の方法で実施していたが,人口規模の大きな自治体では複数の方法で実施している割合が低かった。背景には人的資源の不足等が考えられた。6) 健康診査受診率向上の工夫の実施状況をみると,広報の充実は人口規模に関係なくよく実施されているが,日時の設定の工夫は人口規模の小さい自治体で実施されており,地域の産業構造の違いによることが示唆された。7) 一般健康診査の医師確保先では,一般診査の理学的検査,精密診査の判定とも,人口規模の大きな自治体では医師会より,人口規模の小さな自治体では保健所より確保している市町村の割合が最も高く,医師会の組織力の違いが影響していると考えられた。8) 保健事業に協力している地区組織をみると,婦人会,老人クラブは人口規模の小さい自治体ほどよく協力していた。
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