長崎県対馬カドミウム土壌汚染地域住民の頭髪, 尿および血液カドミウム濃度 - 土壌復元前後18年での比較 -
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概要
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カドミウム(Cd)土壌汚染地域である長崎県対馬厳原町樫根地区において,1981年に行われた土壌改良工事によって,住民の一日平均Cd摂取量は,工事完了前の215μgから106μgに低下した。本研究では,Cd曝露量減少後の住民の尿β2-マイクログロブリン(β2-mg)濃度および尿・頭髪・血液Cd濃度の変化とその意義について検討した。1979年に尿β2-mg濃度が1,000μg/g creatinine (μg/g cr)以上であった住民9人の幾何平均値は,1996年には約2.5倍の高値となった。一方,1979年に尿β2-mg濃度が1,000μg/g cr未満であった26人の幾何平均値は,18年後も変化がなかった。この事実から腎臓障害があった人は土壌改良工事完了によるCd摂取量減少後も,腎臓障害がさらに進行すると結論された。尿Cd濃度の幾何平均値は,1979年では11.0μg/g cr,1996年では6.3μg/g crであり,有意に減少した。1979年の尿β2-mg濃度が1,000μg/g cr以上であった群は1,000μg/g cr未満群に比して,減少率は有意に大きかった(p=0.03)。これは腎臓障害が腎皮質中Cd濃度を低下させ,その結果として尿Cd濃度を減少させることを示唆すると考えられた。頭髪Cd濃度の幾何平均値は,1979年の109.1μg/kgから1996年の55.1μg/kgへと49%減少した。体内Cd蓄積量の指標とされる尿Cd濃度も43%減少したので,頭髪Cd濃度の減少がCd摂取量の減少に直接関係するのか,蓄積量の減少によるものか,あるいは,その双方に関係するかは,今回の研究では不明であった。体内Cd蓄積量の指標とされる尿Cd濃度と頭髪Cd濃度との間には,相関係数が0.38∼0.44と弱い正の相関が認められた。したがって,頭髪Cd濃度は,体内Cd蓄積量の影響を受けることが示唆された。1996年の血液Cd濃度の幾何平均値は5.7μg/lであった。1979年の尿β2-mg濃度が1,000μg/g cr以上であった人の血液Cd濃度の幾何平均値は,1,000μg/g cr未満の人より有意の高値を示した。血液と尿のCd濃度の間に強い正の相関(r=0.70,p<0.01)が認められた。したがって,Cd曝露が軽減して長期間経過した後では,血液Cd濃度は尿Cd濃度と同様に,体内Cd蓄積量に影響を受ける可能性が示唆された。
- 日本衛生学会の論文
- 1999-10-15
著者
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