巨大ガマ腫の2症例
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概要
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ガマ腫は口腔底に存在する唾液腺, 粘液腺, 胎生期遺残組織などから発生する. 我々は1例は舌下腺から, 1例は胎生期遺残組織である甲状舌管から発生した稀有の, いずれも巨大なガマ腫の2例を経験したのでここに報告する.<BR>第1例は臨床上最も発生頻度の高い舌下腺うつ滞性嚢胞であるが, 発生時2年間に安易に10数回に及ぶ穿刺あるいは切開を受けた為, 6年後再発時には頤下部全体に腫脹する巨大なガマ腫となつたものである. 嚢腫下面は下顎体から舌骨体に及び, 口腔底右側を舌下部に侵入し上面前部は瘢痕性の舌下腺と強く癒着し, 後部は舌体に深く侵入していた. 嚢腫壁は暗青色, 脆弱で周囲組織との癒着は非常に強く, 嚢腫内容は淡黄青色粘稠な液のみからなっていた. 組織学的に嚢腫壁は陳旧性の肉芽組織から形成され, 内腔の上皮組織は全て剥離消失しており, 壁の外側の一部に唾液腺組織と, 拡張した内腔に分泌液の貯溜の認められる腺管の存在が証明された. 従って手術及び組織学的所見から舌下腺うつ滞性嚢胞であることが証明された.<BR>第2例はThyroglossal duct cystである. 出生時既に口腔底嚢腫の存在に気付かれ3回の切開を受けたが腫脹をくり返し, 2才11ケ月の時横浜仁保耳鼻咽喉科を受診し, 口腔底嚢腫別出術を受けた. 嚥下困難の為るい痩が著しく, 口腔内は二重舌を示し舌運動障害が認められた. 嚢腫は口腔底全体を占めその後端は舌骨体と強く癒着している巨大なもので, 嚢腫壁は白く硬く周囲組織との癒着は舌骨部を除いて少なかった. 組織学的に嚢腫内壁は扁平上皮及び繊毛上皮が, 外壁は横紋筋及び結合織で構成されている, 即ちThyroglossal duct cystであることが証明された. 本症例は嚢腫後端が舌骨体と強く癒着していたので, 甲状舌管の側枝, Bochdalek腺鞘は舌骨体を貫通し口腔底に伸びた枝であるとも考えられる症例である.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
著者
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仁保 正和
日赤中央病院耳鼻咽喉科
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古屋 正徳
日赤中央病院耳鼻咽喉科
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小倉 脩二
日赤中央病院耳鼻咽喉科
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木村 繁
日赤中央病院耳鼻咽喉科
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小林 康夫
日赤中央病院耳鼻咽喉科
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益子 三郎
日赤中央病院耳鼻咽喉科