慢性喉頭・頸部気管狭窄の診断と治療について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1. 目的<BR>喉頭・頸部気管の外傷による慢性狭窄の治療体系の確立.<BR>2. 方法<BR>慢性喉頭・頸部気管狭窄の12症例中, 高位気管切開 (輪状軟骨位) と交通事故によるもの各4例, 次いで甲状腺腫手術後2例, 火傷と喉頭癌の放射線療法によるもの各1例に対して, 枠形成, 声門前方開大術, 喉頭軟骨除去後の管腔前後径の拡大術を考案し, 施行した.<BR>3. 結果<BR>手術法は前述した枠形成と内腔粘膜補充, 声門前方開大術, 喉頭軟骨除去と管腔前後径の拡大と大きく分けることができるが, これらの手術法を組み合わせて行なうことが重要である. (1) 枠形成と内腔粘膜補充は外傷, 気管切開による輪状軟骨, 気管軟骨の損傷と塩酸誤嚥による声門下腔より頸部気管にかけての粘膜の損傷に対して行った. (2) 声門前方開大術は外傷による声帯の癒着, 甲状腺手術後の声帯正中位固定症に行った. (3) 喉頭軟骨除去と管腔前後径の拡大は照射および気管切開後の感染によって, 喉頭軟骨が壊死におちいった場合に行うと同時に (1), (2) の術式も合せて施行した.<BR>以上の方法によって, 12症例は充分に気道が確保され, 誤嚥もなく, 会話可能な音声になった.<BR>一方, 狭窄予防の立場から考えてみると,<BR>1) 気管切開をおこなう場合には輪状軟骨損傷を極力避けることが必要であるが, 止むをえず, 行なわれた場合には, 切開孔を正常な位置にずらし, 輪状軟骨部を修復すべきである. また外傷で輪状軟骨部に外瘻ができている場合も同様である.<BR>2) 喉頭外傷後4ヵ月間は狭窄を生ずる可能性があるので観察を要す.<BR>3) 治療上, 粘膜瘢痕化の助長をうながすことは避けるべきである.<BR>4) 炎症の輪状軟骨後板への波及は, 極めて長期の治療年月を要するので, 注意深い観察を要する.