外因性耳鳴 (頭部外傷, 音響外傷など) についての臨床的観察
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概要
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1) 目的:<BR>耳鳴は広く各科領域にわたる主訴であるが主観的なもので客観的に把握し難くその診断には困惑させられる. すなわち耳鳴に対する検査は聴覚及び前庭機能検査とともに耳科的検査の一翼をになうと考えられるにもかかわらず未だ有用な方法がないからである. 私は耳鳴の診断に関する手掛りをつかむ目的で外因性耳鳴の統計的観察を行つた.<BR>2) 実験方法:<BR>対象;約11年間に検査した聴覚障害者で, 頭部外傷1526例, 職業性難聴196例, 急性騒音外傷76例, 所謂慢性CO中毒67例の計1865例であつた. 問診及び検査方法; 性状 (常在性か間歇性か), 表現などを記載する. 次に純音気導, 骨導聴力を測定した後に, 気導閾値上約10〜15dBの純音を順次反復聴取せしめて, 耳鳴類似音域, 耳鳴類似周波数を決定する. 正常聴力限界としては20dBを選び, 何れかの周波数1つでも20dBを越えたものは難聴群, それ以外を正常 (聴力) 群とした. 又4000Hz以上を高音域, 3000〜1000Hzを中音域, 800Hz以下を低音域とした.<BR>3) 結果:<BR>イ) 耳鳴の頻度及び性状; 全体として難聴群では69.8%に, 正常群では49.5%に認められた. 常在性耳鳴と間歇性耳鳴の頻度が難聴群と正常群で逆になつていた.<BR>ロ) 耳鳴の表現;難聴群, 正常群ともに「ジー」が最も多く33.2%, 次は「キー」であつた.<BR>ハ) 耳鳴類似周波数; 高音域に耳鳴類似周波数のある割合は, 中音域あるいは低音域に耳鳴類似周波数のある割合より大であつた.<BR>ニ)「ジー」の類似周波数分布; ほとんど高音域に類似周波数を有していた. 難聴群常在性耳鳴では6000Hzに類似周波数を有しているものが25.1%と最も多く, 次で8000Hzであつた,<BR>ホ) 耳鳴類似周波数と気導最大聴力損失検査音との関係; 難聴群常在性耳鳴で高音域に類似周波数を有している耳鳴の93.3%は気導最大聴力損失検査音 (気導損失が最大である周波数以下同意) と同じ周波数又は同音域 (その周波数を含む音域以下同意) に類似周波数を有していた. 気導最大聴力損失検査音と同じ又はそれと同音域に耳鳴類似周波数のある場合の耳鳴は高音域に耳鳴類似周波数が集中する (難聴群常在性で91.2%) が, 気導最大聴力損失検査音と耳鳴類似周波数が他音域にある場合の耳鳴類似周波数は不定分散した. 耳鳴類似周波数と気導最大聴力損失検査音が他音域にある割合は難聴群で, 頭部外傷, 職業性難聴, 急性騒音外傷の順に大となつており, その性状もそれに比例して複雑になつているのではないかと考えられ, 診断の手掛りと推定した. これらの結果から, 特に耳鳴類似周波数と気導最大聴力損失検査音との比較により, 耳鳴の性状, 分類, 予後判定などに有用の場合もあるであろうという事実を強調した.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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