ダッカ市におけるスラムの立ち退きと居住権 (1975-2001)
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概要
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バングラデッシュの首都であるダッカ市は1971年の独立後, 人口の都市集中が急速に進んでいる。ダッカ市の流入人口の大部分は, 食料と住居を求めて来る, 土地を持たない地方の貧困層である。彼/女らの多くは低所得の職にしかつけず, 物価や家賃も高いため, スラムに住むことを余儀なくされる。過去, こうした多くのスラムでは, 居住者の生活更生がなされることなく繰り返し強制的な立ち退きが実施されてきた。本稿はダッカ市における1975年から2001年にかけて行われたスラム立ち退きについて時系列的な立地分析を試みることで立ち退きの過程を概観する。さらに憲法や住宅政策, 様々な国際的な宣言の中で述べられた都市貧困層の居住権に注目する。本稿のデータは主に新聞などの二次資料と立ち退かされた人のインタビューから得られたものである。バングラデッシュ政府は, 憲法と住宅政策の中で居住権を重視し, 居住権に関連する国際的な契約に署名してきた。にもかかわらず, ほぼ毎年ダッカ市ではスラムの強制的な立ち退きが行われ, 居住者の生活更生がなされることはほとんどない。特に1975, 99年, 2001年には大規模なスラムの立ち退きがあった。市当局は, スラムの立ち退きを禁止する法律をうまく回避するために新しい戦略をとっている。こうした強制立ち退きは, 貧困というだけでスラムの人々の人間性を失わせ, 尊厳をも剥ぎとってしまうのである。スラムの状況は立ち退きによって改善することはなく, むしろ悪化しているのである。政府および市当局はスラムの開発や更生に対して適切な計画を立て, 徐々に実行に移すべきである。ダッカ市のスラムの状況は一日で改善することはできず, 長期計画をとることで真摯に改善を図るべきであろう。