電気性眼振検査の臨床的研究 : PENG記録による検討
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概要
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本研究の目的は, 電気性眼振検査を広く臨床的に利用すべく, 先ず従来肉眼観察にのみ頼つていた電気性眼振をPENG (Photcelectronystagmography) を使用して記録・分析を加えることによつて, その生理的並びに病的所見の特徴および判定規準, 他の実験的眼振検査との関連性等について検討し, 更に臨床的観点からその発現機構の一端をも解明せんとしたものである.<BR>正常例20例並びに病的症例37に, 両耳双極漸増的持続通電法による電気刺激を加え, 解発された電気性眼振のPENG記録を分析検討し, 以下の結論を得た.<BR>1) 正常例における電気性眼振反応は, 眼振解発閾値1-2mA, 閾値刺激時の眼振頻度2〜3振盪/5秒・振幅値1-2°と非常に微細なものであり, これは6-8mAの強い刺激によって頻度は3〜5振盪/5秒・振幅値は3-6°と増強しReversal Phenomenon (Pfaltz 1965) を繰返すことにより頻度・振幅値ともに著るしく増大するのが特徴的である.<BR>2) 本実験により観察された電気性眼振の異常所見を大別すると次のごとくになる. (i) 眼振解発閾値上昇, (ii) 眼振解発抑制または廃絶, (iii) galvanic DP, (iv) galvanic hyperexcitability. これ等の所見と障害部位との関連性について検討したところ, 特にgalvanic hyperexcitability現象が上部脳幹障害時に特異的な所見であることが判明し, 脳幹障害部位の局在診断に本検査が極めて有意義であることがわかった.<BR>3) 両側迷路摘出術を施行した症例にも電気性眼振の発現を認め, これをPENG記録により証明した. また温度性眼振解発中に電気刺激を附加してみると, 電気性眼振が前庭性眼振を〓活し同調する事実が判明した. これ等の臨床的観察結果から, 電気性眼振発現の責任部位は, 末梢迷路よりは上位の前庭系, 特に前庭神経に存するものと推論される.<BR>4) 電気性眼振を従来のENGで記録することは, 電流雑音の混入等種々のartifactが出現するため不可能であることが判明した. 従ってPENGこそは, 正確な電気性眼振記録が得られる唯一の記録法であるといえる.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文