耳鼻咽喉科領域における腫瘍性疾患患者血清中の抗EBウイルス抗体価
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概要
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1. 目的<BR>上咽頭癌は台湾から華南, 東南アジア一帯の地域に居住する中国人に多発する癌腫として知られていたが, 最近, バーキットリンパ腫をめぐる研究途上における偶然の出来事から, バーキット腫瘍患者に劣らず, アフリカ, 北米の上咽頭癌患者血清中の抗EBウイルス抗体価が非常に高いことが明らかにされた. 以来, 人間の腫瘍と, EBウイルスとの因果関係についての果てしない議論を呼び起す結果を招いている. そこで私共は, 本邦における上咽頭癌患者血清中の抗EBウイルス抗体価を調べ, 他の耳鼻咽喉科領域の腫瘍性疾患患者血清, 及び健康人血清中の抗EBウイルス抗体価と比較検討した.<BR>2. 実験方法<BR>Henleらの螢光抗体法 (間接法) にて検索した. 即ち, バーキットリンパ腫由来培養細胞系P3HR-1を抗原として, 被検血清を燐酸緩衝液 (PBS) にて40倍, 160倍, 640倍, 2560倍に段階稀釈して反応させ, さらにFITCラベル抗人γ-グロプリンウサギ血清にて反応させた後, 千代田螢光顕微鏡にて観察判定した. 被検血清の螢光陽性最大稀釈倍数を, その抗体価とした.<BR>3. 結果<BR>上咽頭癌患者血清は, 26例中18例 (約70%) が640倍以上の抗EBウイルス抗体価を有し, その中2560倍陽性が3例 (11.5%) に見られた. これは他の耳鼻咽喉科領域の癌患者血清, 及び健康人血清と比べて, 明らかに抗体価の異常な上昇が判明した.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文