植民地都市, 空間, 女性 : 植民地都市台北における日常生活
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概要
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本論文は, 日本植民地統治時代の台北における支配-被支配の関係を日常生活から明らかにし, 人々がいかに植民地主義と相対していたのかを論じるものである。日本植民地支配に対して, 人々はただ受容しただけではなく, 交渉し, 妥協し, そして抵抗した。本論文は, 一台湾女性の日常生活に焦点をあて, 植民地支配下の女性たちがいかに日本植民地支配に抵抗したかを明らかにする。男性や若い世代が同化され「日本化」していく中で, 日本植民地時代初期に生まれ, 日本教育を受けなかった世代の女性たちは,「中国的」生活空間に生きていた。中国の慣習や伝統・慣習・儀式を私的空間と近隣空間において保守し, 植民地都市空間の中で確固とした自己意識と自らの場所を築いていたのである。植民地権力は,公的空間において同化・皇民化政策による支配を強化していったが, 私的空間までは完全に支配することができなかった。その私的空間において女性たちは, 中国性‘Chineseness’を保持していくことができたのである。同化せず, 植民地社会の公的空間からは疎外されていた彼女たちが自らの家庭と近隣空間で守り続けた中国的生活様式は, 植民地主義に対する静かな, しかし雄弁な抵抗であった。