鼻アレルギーにおける細菌感染の役割
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概要
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所謂鼻アレルギー (以下鼻ア. と略す) における鼻粘膜において, 細菌がatopenとして鼻ア. 発症に直接関与し得るか否かと言う問題を解明する為に, 以下の方法により種々の検討を行なった.<BR>方法:<BR>1. 鼻腔の代表的な常在菌の一つである黄色ブドウ球菌をmodel microbeとして使用した.<BR>2. 螢光抗体法により, 鼻粘膜内のブドウ球菌及び抗細菌抗体を検索した.<BR>3. 黄色ブ菌菌体を超音波発生機により破壊し, Verweyの方法により以下の成分に分画した. 1) 核蛋白, 2) 細胞壁の蛋白抗原, 3) 細胞壁の多糖体抗原.<BR>4. 各分画液により, モルモット及び家兎の皮内反応を行ない, 各分画液が, これら動物の皮膚の血管透過性を亢進させる物質を含まない事を確かめた.<BR>5. 上記分画液を用いて, 鼻ア. 患者に皮内反応Prausnitz-Küstnerの反応を行った. 又黄色ブ菌凍結乾燥末により鼻粘膜誘発試験を行なった.<BR>結果:<BR>1. 鼻ア. 鼻粘膜においては, ブ菌と抗細菌抗体産生細胞は, 対照群に較べてより高率に検出された. 抗細菌抗体の局在は, 形質細胞及びリンパ球様細胞の原形質に認められた.<BR>2. 菌体成分分画液による即時型皮内反応は, 基本的には抗原抗体反応であり, 反応の形態及び様式はアトピー型である.<BR>3. 菌体成分の中でも, 細胞壁の抗原が, 他の成分に較べて細菌アレルゲンとしての意義が大きい.<BR>4. 鼻腔から黄色ブ菌が検出された症例では, 多糖体抗原による即時型皮内反応が強く出る傾向がある. この抗原による即時型皮内反応から, 鼻粘膜局所における細菌アレルギーの存在を推測出来る.<BR>5. ブ菌菌体成分に対する血中のレアギン型抗体が検出される例は少ない. しかしながらこの事実のみからは, 鼻ア. におけるatopenとしての細菌の関与を否定する事は出来ない.<BR>6. 鼻ア. における黄色ブ菌凍結乾燥末による誘発像も又, 基本的にはアトピー型であると推察された. 又多糖体抗原による即時型皮内反応と, 誘発試験はよく比例した.<BR>結論:<BR>細菌はatopenとして直接鼻ア. 発症に関与し得る. 細菌によるアトピー型アレルギーの関与は, 血管運動性鼻炎だけではなく, 主に吸入性抗原が病因抗原である鼻アレルギーにおいても存在する.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文