マイクロアンギオグラフィーによる犬の舌粘膜, 特に乳頭附近における微小血管分布に関する研究
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概要
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舌は全身疾患との関係が密で, 多くの全身的疾患に際し舌に変化が現われることは周知の事実である. しかしながら現在尚発生機序が不明としていろいろな病因論が云われている場合も多い. 舌のうち特に反応の敏感な乳頭部の微小血管系が何か重要な役割を演じていることは当然予想されることである.<BR>そこでまず舌乳頭のmicrocirculatory unit全体の形態を確実に把握しておくことはその病態を理解する際の基本としてきわめて有意義なことゝ思われる.<BR>血管系の分折法としては種々の方法があるがBarclayらによって提唱されたmicroangiographyなる方法がある. この方法は比較的生理的条件でしかも広い視野をdemonstrateし得る特色がある. 著者はこのmicroangiographyを応用して犬における舌粘膜, 特に乳頭を中心とした微小血管分布状態を観察し若Fの知見を得た. 舌粘膜における各乳頭はその形状が異なるにつれてその微小血管の分布構造にも差異が認められるが. いずれの乳頭においても血管網は非常に豊富であり, 乳頭内に移行する動脈枝は一般に能動的収縮を思わせる所見を認め, 乳頭内の毛細血管網は拡張像を示す所見が認められる. これは放熱に際し極めて有効に働く為の, 合目的な様相を呈していると考えられる.<BR>血管走行の経過の点では二つの型があると考えられる. 即ち第一は糸状乳頭, 茸状乳頭. 円錐乳頭に見られる型で粘膜固有層にほゞ平行して存在する比較的緻密な動静脈網から出た動脈枝は乳頭根部より乳頭の粘膜上皮に向い上昇し乳頭下層において係蹄状の緻密な毛細血管網を形成したのち集合して静脈系となり下降し, 粘膜固有層における静脈へ注ぐ型で, 粘膜固有層と筋層の間には明らかな血管の連絡が認められない. 粘膜固有層における動静脈網には相互の吻合が認められる.<BR>第二は有郭乳頭, 葉状乳頭に見られる型で, 乳頭内に入る動脈は粘膜固有層からではなく筋層からの動脈枝で乳頭下層において毛細血管網を形成したのち集合して静脈系となり下降し筋層に注ぐ型で, 粘膜固有層と筋層の間に密接な血管の連絡が認められる.<BR>以上のことは病変の血行性進展に何らかの意味をもつものと示唆される.<BR>微小血管分布型からみると蹄形型に属すると考えられ栄養血管であると同時に機能的には温調節に関与すると考えられる.<BR>臨床的に考えてみても反応の場としての微小血管系が病変作製の基盤となるものであることが示唆され, 今後この方面より追求さるべきであると思われる.