鼻性病巣感染の臨床的研究
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概要
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副鼻腔をfocusとする鼻性病巣感染の実態を明らかにするため, 慢性副鼻腔炎患者で二次疾患に算えられる疾患を伴なう54例と, 対照として単純性副鼻腔炎の50例とを比較検討した.<BR>扁桃など他にfocusの認められない純然たる鼻性病巣感染は, 副鼻腔炎患者1350名中27例2.0%であつた.<BR>1) 病巣性副鼻腔炎の局所病態の特徴は, 鼻腔所見において副鼻腔炎症状の高度なものが多い. X線所見も陰影の高度なものが多く, その半数は粘膜線毛運動の機能が障害されている. 上顎洞内分泌物は膿性, 粘液膿性のものが95.9%である. 洞内細菌は溶血性レンサ球菌が59.3%に検出された. 洞内粘膜組織は肉芽型が多く, 炎症の強さを示し, 浮腫型もかなり多くアレルギーの関与が窺われる. また粘膜の嚢胞や血管炎は半数以上にあり, リンパ球浸潤は88.9%と高率に見出された.<BR>2) 病巣性副鼻腔炎の全身的病態は, 白血球増多の傾向があり, 白血球分類では好中球, リンパ球増多がやゝ多く, 好酸球の増多する症例も多く, 粘膜組織の浮腫型の多いことと一致する. 赤沈値は10〜25mm以上の促進するものは単純性の10%に比べ病巣性は52.7%と多い. 心電図は初診時異常所見のあったものは51.8%で, 単純性の2.5倍にみられ, 病巣性では廓清手術により全例が改善した.<BR>3) 副鼻腔性病巣の診断法は詳細な問診の聴取により48.1%は関連性が推測され局所病巣打消法は, 上顎洞を0.05%リバノール液で7日間連続穿刺洗浄が適当であり, 病巣性微熱, リウマチの診断に好適である. 病巣誘発法では, 超短波誘発法が適しており, その陽性判定基準は, 頬部犬歯窩部より15分間照射で15分後の体温0.3℃以上, 3時間後の白血球数2000以上, 赤沈値10mm以上の変動が妥当である. 各検査項目のうち微熱では体温と赤沈値, リウマチと腎炎では白血球数と赤沈値の組合せに陽性が出てリウマチは疼痛の増悪, 腎炎は尿タンパク量の増量があれば病巣診断的意義がある. 陽性例の病巣廓清効果率は85.4%と高い. そのほか低周波, 超音波による誘発法を検討したが, その信頼性は低く, 価値は少ない.<BR>4) 病巣性副鼻腔炎では病巣廓清後の二次疾患の経過は, 全例に主症状, 各検査項目がおよそ7日目頃に一過性増悪がみられるが, その後次第に回復に向い, 微熱は10日目頃, リウマチ, 賢炎では1ヵ月目頃までに軽快ないし治癒する.<BR>以上の成績から鼻性病巣感染の存在は確かであり, 病態を把握し, 各種診断法を応用して, 早期に病巣廓清を行なえば, 二次疾患の治癒または予防を期待することができると思われる.