鼻アレルギーにおける鼻甲介粘膜の組織化学的並びに電子顕微鏡学的研究
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概要
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著者は臨床的に観察した64例の鼻アレルギーにつき, 組織化学的並びに電顕的研究をおこなつた. 鼻アレルギーの非発作時および発作時につき比較し次の結果を得た.<BR>1) 皮内反応により1種類の抗原にのみ陽性を示したものの詳細については次の始くである. 室内塵 (11例), ブタクサ花粉 (7例), スギ花粉 (4例) である.<BR>2種以上の抗原に陽性を示したものは21例で, 皮内反応陰性者は14例であった.<BR>鼻アレルギー発作時における鼻粘膜の肉眼的所見は, 著しく蒼白でかつ浮腫状肥厚を示し, 漿液性鼻漏は著明であつた.<BR>2) 組織化学的観察でPAS染色, AB染色, AB-PAS染色により陽性物質はムコ多糖であると理解され, 鼻粘膜において非発作時よりも発作時 (誘発時) に著明な増加を認めた.<BR>3) 通常の電顕的観察で発作時 (誘発時) において, 杯細胞の活動は活発化し, mucin globuleの著明な増加がみられ, 杯細胞に接した線毛細胞中にもmucin globuleの含有されているのが認められた. この場合, 細胞表在面に存在するciliaおよびmicrovilliは膨化, 離断, 消失する. 細胞間間隙の拡大は基底部において特に著明で, 浮腫状液の貯留も著しい. 基底膜の肥厚も著明である. 粘膜下組織も浮腫状で, 好酸球増多も著明である.<BR>4) periodic acid methenamine銀染色による電顕的観察で次の結果を得た.<BR>(i) 慢性肥厚性鼻炎ではciliaおよびmicrovilliは比較的よく保存され, 本染色によりplasma membraneの染色性はやや増加している. PAM染色陽性のmucin globuleは杯細胞のcytoplasm中に散在性に存在しているのが認められる.<BR>(ii) 鼻アレルギー非発作時においてはciliaおよびmicrovilliは比較的良く保存され, 本染色において, plasma membraneの染色性はむしろ増加しているのがうかがわれる. mucin globuleは線毛細胞と杯細胞に同時に増加しているのが認められる. 極めて注目すべき所見は, mucin globuleと粗面小胞体のcysternaとの間に類似の染色態度がみられることで, これは両者の間に密接な機能上の相間関係があることを示唆している.<BR>(iii) 発作時 (誘発時) においてはcilia, microvilliおよびplasma membraneの離断, 解離等がしばしば認められる. 線毛細胞と杯細胞のcytoplasmaは殆んどPAM陽性のmucin globuleによつて置きかえられる. 上記の所見は発作時 (誘発時) における著しいムコ多糖の増加を実証するものであろう.<BR>(iv) 更に発作時 (誘発時) においては繊細な線維性網状構造 (fine fibillary network) の離断, 消失と共に基底膜の膨化, 浮腫の極めて著しい特徴をなす.