鼻咽腔悪性腫瘍の臨床並びに病理学的研究
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概要
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過去20年間に鼻咽喉腔悪性腫瘍41例がわれわれの臨床において診療された. これらの症例は男子26例および女子15例からなり, 平均年令は47.9才, 40才以下のものが13例 (32%) であり, 最年少者は19才男子であった.<BR>この疾患の初期症状はしばしば耳症状や鼻症状, 脳神経障害および頸部リンパ節腫脹として現われ, 8例のみ原病巣に初期徴侯が発現した. 転移は70.7%に出現し, 頸部リンパ節に最も多く来たした.<BR>主として照射療法が適用されたが, 数例において外科的に腫瘍の摘出, 頸部廓清術が行なわれ且つ術後照射が併用された.<BR>5年生存率は22%であった.<BR>41例は組織学的に23例の扁平上皮癌と18例の悪性リンパ腫に分類された.<BR>23例の扁平上皮癌は4例の分化扁平上皮癌と19例の未分化扁平上皮癌 (移行上皮癌9例, リンパ上皮腫10例……Régaud型8例とSchmincke型2例) に分けられた. 未分化扁平上皮癌は分化度の低い細胞からなり, 大きな卵形の胞状の核を有し, 内部に1または2個の凹凸のある好酸性の核小体を包含していた. 移行上皮癌とリンパ上皮腫との区別はリンパ球浸潤の有無に頼った.<BR>18例の悪性リンパ腫の中では, 12例の細網肉腫と1例のリンパ肉腫が組織学的に確診された. 細網肉腫の特徴は明るい胞状の核を有する多形で大形の腫瘍細胞と合胞状の細胞質および腫瘍細胞に密接に付着している繊細な好銀線維の網絡であった. 他方, リンパ肉腫の特徴は微細な顆粒状の核を有する均等な小形の腫瘍細胞と乏しい細胞質および腫瘍細胞との関係を有しない太い好銀線維, 腫瘍細胞の濾胞様集落および腫瘍細胞間に散在する多数の肥胖細胞であった. 残りの5例はその組織学的特性からは厳密に分類出来なかった.<BR>剖検は8例 (分化扁平上皮癌1例, 移行上皮癌2例, リンパ上皮腫2例および細網肉腫3例) に行なわれた. 剖検例全例に腫瘍の頭蓋内侵襲が認められ, 1例を除けば, 頸部リンパ節, 肝臓その他の臓器にしばしば転移が認められた. 3例においては原発腫瘍は移行上皮癌またはリンパ上皮腫と診断されたが, その転移巣では原発巣の組織学的特徴と比較して組織学的に多少移行像を示した.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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