放射性同位体を取扱う実験室の設計と建設
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概要
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共同利用施設として昭和30年に発足した東京大学原子核研究所は,建設も進み,本年夏から20MeVの重陽子をうるためのサイクロトロンの運転を開始する運びとなった.一方放射性同位体(以下RIと略記する)を取扱う実験室約60坪は昨年春から設計にかかり,本年5月に完成した.筆者はこの設計,施行面を担当してきたので,そのささやかな経験を中心として,RI実験室についてのべようと思う.サイクロトロンで照射した物質を取扱うという特殊性のために,一般向でない点もあるかとおもうが,また従来の参考書からはえられなかったような経験もあったので,似たような仕事をされる方に参考となりうれば幸である.<BR>この研究所のサイクロトンは20MeVの重陽子を加速する場合最高1mAの内部電流がえられる.また周波数変調方式(FM)によって陽子を加速する場合は65MeVのビーム約5μAがえられる.これらを用いてRIをつくる場合を考えると,連続運転しうる時間には限りがあるから,たとえ核反応断面積の大きい反応をさせてもそれによってえられるRIの量は1キュリー以下であるとしてよい.最も強力なγ線(2.76MeV)を出すナトリウム-24(半減期15時間)1キユリーをあつかうと仮定して防護施設を設計した.もちろんサイクロトロン自身から発せられる放射線(主として速中性子およびγ線)の防護は別に考えるべきである.
- 社団法人 日本分析化学会の論文