抗生物質の化学的定量法
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概要
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抗生物質を定量する方法の一つとして微生物学的方法がある.この方法は,その効力を直接微生物をもちいて確認することができ,定量のさいに,混在する不純物,分解物をあまり気にせずに行えるので,抗菌性物質製剤基準には,ほとんどすべての抗生物質の定量法として微生物学的方法が採用されている.しかしながら測定値のふれが大きく,測定に時間と手数を要し,多くの検体を処理するのに不便である.抗生物質のうち化学構造が明らかとなったものが多い現在,精度の高い迅速な化学的方法が要望されるのは当然のことである.<BR>化学的定量法で最も問題となるのは不純物との分離である.抗生物質の構造は多くは複雑で,その分解物はもとの物質の化学的活性基をそのままもっていることが多いので,もとの物質と類似の反応をおこない,また種々の段階の分解物が存在してその分離に困難をきたす.したがって純粋な物質について種々の濃度の定量が可能な方法でもただちに不純な検体にもちい得るとはかぎらない.化学的定量法は,かならずこれを種々の検体について微生物学的定量法の結果と比較して,そのあいだに差のないことを確かめておかねばならない.このような困難にもかかわらず,現在まで多くの化学的定量法が報告されている.以下われわれが日常多く使用する抗生物質の化学的定量法について概説したいとおもう.
- 社団法人 日本分析化学会の論文