炎光分光分析の現況
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概要
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分析化学の領域における分光分析の地位は現在既に確乎としたものになり,Chemical Abstracts 誌上には一年間に分光分析関係の報文が数十報も抄録され,国内の各種研究発表会や討論会に数報の報告がなされないことはないようになったが,とくに最近10年以来は炎光分光分析の業績が目立ち,弧光法に次いで広く用いられるまでに至った.<BR>炎光法はもともとアルカリ元素やアルカリ土類元素の分析に適する方法であり<SUP>1)7))</SUP>,初期の応用面は土壌や肥料,植物体中のK<SUP>2)3)4)5)6)9)</SUP>に始まり,ついでCaやNaが分析され<SUP>14)21)34)36)41)43)52)53)58)60)63)82)88)</SUP>,人体血清や尿中のNa,K<SUP>10)11)12)17)22)23)32)</SUP>,ガラスその他窯業関係品や鉱物中のNa,K,Ca<SUP>14)21)34)36)41)43)52)53)58)60)63)82)88)</SUP>の順に開拓されてきたのであるが,今日では広く化学,鉱物学,金属学,生物学,農学,医学,ならびに窯業,食品,水質検査などの各方面にわたって盛んに利用されている.日本分析化学会では日本分光学会と共催のもとに1954年6月,炎光分光分析講習会を開き多数の参会者を得たが,炎光法の研究はその後益々発展した.殊に従来はアルカリ元素やアルカリ土類元素につき比較的安易に標準溶液を作って分析していたところ,共存物質の影響が頗る重大であることの認識が深まったために一層慎重な考慮を加えつつ分析が行われるようになり,分析される元素の種類がNa,K,Ca及びこれらに次ぐMg<SUP>23)25)</SUP>から次第に拡大してBa<SUP>67)111)</SUP>,Sr<SUP>67)111)</SUP>,Li<SUP>37)51)76)79)</SUP>,Mn<SUP>28)62)100)101)102)105)107)112)</SUP>,In<SUP>29)54)86)105)</SUP>,希土類重金属<SUP>100)101)102)112)</SUP>へ手が届くようになった.しかしこれは一方において装置の発達や燃料ガスの研究があったからである.炎光法自身はBunsen,Kirchhoff(1861)によって分光分析の最初の第1歩に採用された古い方法であるにも拘らず,その方面における新しい進歩改良のもとに全く別の様相をもっに至った.著者はまず装置の発達を概観し炎光分光分析法の現況を簡単に紹介したいと思う.
- 社団法人 日本分析化学会の論文
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