化学実験室における水銀の保管について
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概要
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以上の実験の結果をまとめると次のようになる.<BR>(1)化学実験室などでよく水銀を水で被覆して保管するが,この場合水を通して水銀は蒸発し,水による被覆の効果は思ったほど大きくはない。そして,水銀の蒸発量に及ぼす影響としては被覆水の水質,水銀の表面積,被覆する水の高さ,放置時間,温度などが大きく作用している.<BR>(2)被覆する水の中に微量の遊離塩素またはかなりの濃度の食塩を含有するときは水銀の蒸発を防止できる.それは水銀の表面に,水に溶けにくい塩化第一水銀のうすい沈殿膜を生じることにより蒸発が抑制されるものと考えられる.したがって,水道水を用いればある程度は同様の効果が期待できる.なお,このほかにガソリンなどによって被覆液層を二層にしたり,硝酸などの酸類を水に溶かしたもので被覆することも水銀の蒸発防止に有効であった.以上,水銀の保管に関して行なった実験成績を述べたが,要するに水銀を水で被覆しても開放的にしておくことは注意を要することであり,できるならば容器に入れて密せんして保管することが望ましい。なお,これらの実験データはいずれも比較的短い放置時間の場合の成績であり,長時間の場合についてはさらに検討を要するものと思われる.
- 社団法人 日本分析化学会の論文