1 共通試料による共重合体の熱分析の研究
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概要
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4種類の結晶性ポリオレフィン共重合体を用いて,示差熱分析に関する共同研究を行なった.その結果高分子化合物の標準分析法として示差熱分析を利用するためには,精度的に問題があり,今後測定条件などについて慎重に検討する必要のあることが明らかになった.共同研究で得られた結果を要約すると次のとおりである.<BR>1.共通試料の融解のピーク温度は測定者によってかなりばらつきがあるが,安息香酸などの低分子化合物の基準物質を用いて温度補正を行なうことによって,ばらつきを小さくすることができる.したがって,装置の温度補正を測定時に常に行なう必要がある.<BR>2.共通試料の融解熱は非常にばらつきが大きく,測定条件を統一し,さらに融解面積を求める際の個人差をなくしても,このばらつきはいっこうに小さくならない.<BR>3.熱量測定の標準物質に用いた安息香酸は,その充てん方法によって融解面積が異なり,また融解曲線の形状もシャープなもの,ショルダーあるいは二つのピークのあるものが現われる.<BR>4.共通試料の場合,サンドイッチ法では試料量が多くなると融解面積は飽和する傾向を示し,検量線は直線性を示さなくなる.しかし試料単独法では試料量が約100mg以下の場合に直線関係が成立する.これは試料とセルとの接触面積に関係すると思われる.すなわち,試料量の増加あるいはサンドイッチ法のように希釈物質の添加は試料量に比べ接触面積が減少し,試料内温度分布が不均一になり,<I>ΔH</I>=κ<I>A</I>(<I>ΔH</I>:エンタルピー変化,<I>A</I>:面積,κ:比例定数)のκが一定にならないことに基因すると思われる。<BR>5.したがって融解熱のばらつきの大きい原因は,充てん方法によって融解面積が著しく違うような安息香酸を熱量の標準物質に用いたこと,および測定条件ことに試料量および試料の充てん方法が必ずしも最適ではなかったことにあるように推察される.
- 社団法人 日本分析化学会の論文
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