複素環化合物の3, 3-シグマトロピー転位反応
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概要
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1965年Woodward, Hoftmann両氏は軌道関数の対称理論を使って, π電子の関与する熱や光による協奏反応の選択律や立体特異性を見事に説明し, 有機反応機構の領域において多大の注目を引いた。これら数篇の報文の一つに出てくる3, 3-シグマトロピー転位反応というのはビアリル系化合物の熱転位反応で, 環状安定化された遷移状態を通り, σ結合が1, 1の位置から3, 3の位置へ協奏的に移動する反応の総称と考えてよい。この種の反応は古くから知られたClaisen転位やCope転位により代表されるもので, 触媒や溶媒など外的条件にほとんど影響されず, 従来のイオン反応やラジカル反応とは別個に取扱われてきた。<BR>1X-1-3-3〓 [X] 〓X<BR>X=C, O, N, S<BR>これらの反応においては, 反応生成物は出発物質よりも当然熱力学的に安定でなければならず, 反応系における熱力学的安定性や反応機構などの研究をはじめ, 合成化学的にも芳香環へのアルキル基導入反応やアリサイクリック化合物での立体特異的アルキル化反応として広く応用されている。<BR>近年, 化合物の分離精製, 構造確認法の進歩にともない, この種の反応はvalence isomerizationなど熱力学的研究とともに, 新しい系への拡大などその進展もいちじるしく, また, 複素環化合物への展開もここ数年の問にいちじるしい発展を見つつある。最近の進歩に関する一般的解説はそれぞれ他の総説を参照いただくとして, ここでは著者らの研究と関連のある複素環を対象としたこの分野における最近の研究の発展に限定して述べる。
- 社団法人 有機合成化学協会の論文