縮合多環系建染染料及びその誘導体の硫酸呈色反応に関する研究 (第2報) : 縮合多環芳香族炭化水素の硫酸呈色反応に就て
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概要
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縮合多環芳香族炭化水素類は濃硫酸中において黄色より緑色迄深い美麗なる呈色反応を示す。しかしてその吸収スペクトルは有機溶剤中において有する吸収よりも遙かに長波長側にずれて, その吸収曲線の形状も全く異る。此の現象についてはこれ等縮合多環芳香族炭化水素類の有する炭素二重結合>C=C<の有するπ電子と硫酸の有するH+とが反応して所謂Dewarのπ-Complex的なものでなくH.C.Brown等の主張するσ-Complexを形成し, カルボニウムイオンが生成する為であると解釈される。著者はシベンゾヒレン, ビオランスレンB, テトラセン等についてその各酸度硫酸中における吸収スペタトル図より経験的に解離平衡が存在することを確認し, ジベンゾピレン, ビオランスレンBにおいてはH+との間に二段の解離平衡が存在する事を確め, 又テトラセンにおいて一個の解離平衡が存在する事を確め各々の平衡恒数をpKで表示する事によりこれ多環芳香族炭化水素の塩基性を示した。ジベンゾピレンについてはpKI-5.0 pKII-7.4の値を得, 又ビオランスレンBについてpKI-5.1, pKII-6.7, テトラセンについてはpKI-6.6を得た。厳密には何個のpKが存在するかは硫酸中の氷点降下実験に待たねばならなぬが, 本報では経験的に求められたpKIの値は各分子について比較しうる量と仮定し本報において求められたジベンゾピレン, ビオランスレンB, テトラセンのpKIを比較すれば分子の形により僅かの差を生ずるが, 各分子のpKIとpKIIとでは相当の差が見られる。これはH+一個の附加によりその分子の塩基度が減じ, 二個目のH+は附加しにくくなる為と推定せられA.Albert等の含窒素縮合多環芳香族炭化水素のpKの研究における窒素原子一個を含むピリジン, キノリン, アクリジン等と窒素原子二個を含むピリミジン, キノキサリン, フェナジンとのpKの差と対比せられると考えられる。
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