カニクイザルの視覚判定のための簡単な方法の検討
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概要
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光の透過率の異なる面を着用した観察者の眼に対するカニクイザルの凝視反応を利用する視覚判定のための簡単な方法を考案した。本法を正常および異常眼所見を示している個体に適用した結果,簡単であること,半定量的な評価のできること等から,視覚機能のスクリーニング検査として有効に利用できるものと考えられた。我々は,実験用霊長類の大規模生産施設(Honjo,1985)において,種々の臨床検査を実施し,サル類の健康管理に努めている(長ら,1987;羽成ら,1987;Sugimotoetal.,1986a,1986b;吉田ら,1982,1986)。その臨床検査のひとつとして眼検査を実施しており,これまでに,カニクイザルやミドリザルの眼底像の年齢別標準像や異常像,瞳孔膜遺残例,白内障例等についての報告をしてきた(鈴木ら,1983,1984,1985a,1985b,1986a,1986b;Suzuki et al., 1988)。ところで,これらの検査により見いだされた異常眼所見を示す動物の視覚機能の良否を検査する方法には網膜電位や視覚誘発電位の測定(Gelatt,1981;高橋ら,1980)等があるが,多数のサルを簡単に検査する方法はこれまでに十分検討されていない。そこで,我々は人の眼に対するカニクイザルの凝視反応を利用した視覚機能判定のための簡単な方法を考案し,その有効性について検討したので報告する。