大雪山系, 多年性雪渓の構造
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
大雪山系には, 長さ100m規模の雪渓が多数ある.そのうち高根ヶ原 (北緯43.6°, 東経142.9°, 高度1700m〜1750m) の東斜面の落ち際にかかる3つの規模の異なる雪渓について, 構造調査を行なった.調査は1972年の融雪期間に行なわれ, 成層構造, 斜層理, 断層, 年層境界, クレバス, ベルクシュルンド, 水みち, 結晶粒径変化等の主としてメソスケールの構造要素の観察を行なった.得られた結果は次の通りである.<BR>3雪渓の冬期間涵養は, 東斜面の落ち際に発達する雪庇が前進することで進む.雪庇の前進は, 主として基盤地形によって決定され, 地形のわずかな差が類似した気象条件下にあるこの地域の雪渓の規模に大きな影響を与えている.<BR>雪渓内に発生した亀裂には3種あり, 通常の山岳氷河で見られるクレバスとほぼ同一のものが最も大きな雪渓にだけ見られた.表面での融雪水は, 前年からの越年積雪層の上面にまで浸透してゆくのが観察された.また水みちが大きな2つの雪渓中に形成されていた.片理は形成されていず, 堆積時に形成された成層構造が, 数年後底で雪が消失するまで残存している.以上の観察から, より多くの構造要素が, より大きな雪渓に形成されていることが確かめられた.