呼気水素試験(EHT)の臨床応用に関する基礎的研究
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概要
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著者は,呼気水素試験(EHT)が本邦でまだ臨床検査として基礎的に検討されていない事実に鑑み,従来の糖吸収試験と対比しながら,その臨床的有用性について追求した.対象は健常成人30例,吸収不良症候群6例を含む各種臨床例30例計60例とした.呼気採取法は,著者が施行したopen system法は簡便で被検者に与える苦痛もほとんどなく,また呼気採取時に場所を選ばないなど臨床検査法として適するものと考えられた.基礎呼気水素量は0.03±0.003ml/minであり,健常例,臨床例ともに差がなかつた. lactulose-EHTにて水素非産生型が6例(10.7%)にみられ,男性が女性に比し呼気水素量が低く,まだ同群でも個々に呼気水素量に差がみられ,水素産生能には個人差が大きいことが判明した. lactose-EHTとLTTとの間には相関はないが,水素産生能の個人差を除外する目的で, lactulose-EHTによる補正を行なうと, 3時間値で相関があつた(P<0.05). D-xylose吸収試験の成績とD-xylose-EHT値は2時間半で相関があるが(P<0.05), lactulose-EHT値で補正するとより強い相関があつた(P<0.001).補正による吸収不良症候群の診断率は80%であつた. EHTは臨床検査法として有用ではあるが,水素産生能の個人差が大きく無視することができず, lactulose-EHT値による補正が必要と考えられた.また抗生物質投与,浣腸など腸内細菌叢が変化する状態では配慮を要する.
- 社団法人 日本内科学会の論文