肝細胞癌に特異性の高いnovel γ-glutamyl transpeptidase (γ-GTP) isoenzymeにかんする臨床病理学的研究
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概要
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γ-GTPの有する癌胎児性な性格に注目した研究より発見された肝細胞癌に,かなり特異的に出現するnovel γ-GTP isenzymeに関して,肝細胞癌180例を中心とした検討より,本isoenzymeの臨床的有用性と病理学的意義の解明を試みた. novel γ-GTP isoenzymeは肝細胞癌180例中102例, 57%に検出され,その他の肝胆道疾患では279例中7例, 2.5%に出現したのみで,肝細胞癌に対する特異性は非常に高い.一般に本isoenzymeの陽性率はα-fetoprotein (AFP)の低い群よりも高い群で高率であるが, AFPの肝細胞癌に対する特異性の低くなる400ng/ml以下の71例中25例, 35%に陽性例がみられ, AFPの低値あるいは陰性の肝細胞癌の診断にも有用である.肝スキャンによる進行度分類において,欠損像が大きくなるにつれて陽性率が高くなるという関係はみられず, stage Iで20例中10例50%と高い陽性例が認められ,比較的進行度の低い症例の診断にも有用性が高い.病理所見との対比では陽性群で一般に肝重量が大きいが,肝硬変合併の有無,細胞異型度とは明らかな関連は認められない.細小肝癌と切除例における検討では,高度な肝硬変に副次的に合併した寡結節硬変型の肝細胞癌では,本isoenzymeの陽性例やAFPの高値例はみられない.一方,比較的手術成績がよいといわれる被包型,または切除例でこれらのtumor markerのいずれかが陽性であることより, AFPと共にnovel γ-GTP isoenzymeを検討することの重要性が窺える.
- 社団法人 日本内科学会の論文