覚醒剤常用者におこつた右心型感染性心内膜炎の1症例
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概要
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覚醒剤常用者におこる右心型感染性心内膜炎は,米国においては多数症例報告があるが,我国ではそのような症例報告はまれである.症例は31才,男.主訴全身倦怠感および発熱.入院の2年前より時々覚醒剤を静注していた.入院10日前より高熱あり全身倦怠感強く起座不能となり入院.血圧80/40mmHg,脈拍120/分,呼吸数30/分.全肺野に湿性ラ音を聴取,心雑音なし.両肘窩部両手関節部に硬い注射痕を認めた.胸部X線像上境界不鮮明な結節状陰影が多数肺の末梢側に認められた.心臓超音波断層検査では,三尖弁に輝度の高い疣贅を認めた.覚醒剤静注によつて生じた右心型心内膜炎および多発性肺膿瘍と診断し,血液培養後強力な化学療法を開始した.原因菌は黄色ブドウ球菌と判明.内科的治療に奏効せず外科的治療を考慮するも進行する腎不全・呼吸不全・出血傾向により手術不能と判断.第23病日,呼吸不全にて死亡.覚醒剤常用者における感染性心内膜炎では三尖弁に病変をつくることが多く,心雑音聴取不能の例でも超音波断層検査でその病変をとらえることが可能で,有力な診断法の一つとなる.化学療法の発達した現在でも覚醒剤常用者の感染性心内膜炎は合併症が多く予後不良の場合があり,化学療法が奏効しない時は早期に弁切除術を考慮する必要がある.覚醒剤常用者の増加に伴い,今後日本においても本例のような感染性心内膜炎の増加が予想され,念頭におくべき重要な疾患と考えた.
著者
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亀井 徹正
茅ケ崎徳洲会総合病院内科
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原 芳邦
茅ケ崎徳洲会病院循環器科
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上野 文昭
茅ケ崎徳洲会病院内科
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相澤 信行
茅ケ崎徳洲会病院内科
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福山 次郎
茅ケ崎徳洲会病院内科
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内山 富士男
茅ケ崎徳洲会病院内科
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亀井 徹正
茅ケ崎徳洲会病院内科
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原 芳邦
茅ケ崎徳洲会病院内科
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