剖検高血圧心の形態(肥厚,拡張)と心電図の対比
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概要
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高血圧症における心病変を心電図所見から推測することは日常臨床において重要であるが,これまでそのような研究はあまりみられない.そこで140例の高血圧症剖検心の形態学的変化と心電図所見を比較検討し,次のような結果が得られた.すなわち,高血圧症においては,心電図上QRSの高電位差, ST, T異常が高頻度に出現し,これらの変化は左室の肥厚,拡張の強いものにより高頻度に出現する傾向を示したが,正常に近いと思われる高血圧心においても対照より明らかに高頻度であり,高血圧症心電図の特徴的所見と考えられた.また高血圧症では電気軸が左軸寄りになる傾向を示したが, -30°を越える左軸偏位は少なく,左室の肥厚,拡張とは相関が認められなかつた.今回新しい試みとして,胸部誘導V1-6のRとSの平均値を高血圧の病型ごとに,また左室の大きさの各群ごとに求めてプロットし,曲線のパターンを調べた.これによると,左室の肥厚,拡張が高度になるとV2-4のS波が著明に深くなり,移行帯の左方移動および急変の頻度が高くなることが認められた.以上の結果から,心電図所見によつて高血圧心の形態学的変化や心病変をある程度推測が可能であり,とくにV1-6のR, S曲線の臨床的有用性が期待される.
- 社団法人 日本内科学会の論文