肝疾患における性ホルモンおよび下垂体性腺系の異常
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概要
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著者は肝疾患の性ホルモン異常について急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変症で検索した.急性肝炎3例は症状の極期に一過性に血漿testosterone,あるいはestradiolが上昇した.慢性肝炎23名は血漿testosterone: 1296±458ng/dl(正常: 696±192ng/dl P<0.05), estradiol: 59.5±23.4pg/ml(正常: 37.5±12.5pg/ml, P<0.01)と有意に上昇した. TeBGは正常の約2倍に上昇し,性ホルモンとの間に良好な正の相関が得られた. LH, FSHの基礎値およびLH-RHの反応は正常で,慢性肝炎の性ステロイドの上昇はTeBGの増加による影饗が大きく,性腺機能は本質的に正常と考えられる.肝硬変症34名の血漿testosteroneは1/3の症例で低下, LH, FSHは約半数で上昇がみられ一次性性腺機能障害が示唆された.一方,血漿estradiolは48.4±2.4pg/ml(P<0.01)と有意に上昇し, estradiol負荷でも肝硬変症で明らかにestradiolの血中停滞が認められた.さらにTeBGと性ホルモンの間に相関は得られず血中estradio1の上昇はホルモン産生および代謝障害に基づくものと考えられる.腹水の貯留した肝硬変症5例は全例血漿testosteroneは低値であつたが腹水消失後3例は正常レベルに上昇し,性腺機能に及ぼす全身状態の影響が示唆された.肝機能と性ホルモンの相関は慢性肝炎でestradiolとBSP,肝硬変症でtestosteroneとcholinesteraseの間で認められた.女性乳房,くも状血管腫,手掌紅斑は特に肝硬変症で多くみられ, 3徴候に共通するものとしてestradiol/testosterone ratioの異常が認められた.