Ampicillinにより惹起されたと思われる多発性筋炎症候群,急性腎不全,播種性血管内凝固症候群の1例
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概要
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入院時に, (1)細菌性髄膜炎, (2)薬疹, (3)多発性筋炎症候群, (4)急性腎不全, (5)播種性血管内凝固症候群の多岐にわたる病態を呈した1例を経験した.症例は36才,女性.入院1週前より発熱し,翌日某医からampicillin lg/d 3日分を投与された.その翌日より筋肉痛が,翌々日より全身皮疹,食欲不振が出現し,筋肉痛増強し,乏尿となり,入院.体温37.2°C.重篤感あり,痴呆状態を呈し,全身筋肉痛,項部強直,四肢にび漫性紅斑を認めた.貧血,血小板減少はなく,白血球数16500/cmm, BUN 96mg/dl, creatinine 8.5mg/dl, bilirubin 0.50mg/dl, GOT 371U, GPT 37U, LDH 1976IU, CPK 41U,尿中creatine 1440mg/dから,上記(3), (4)が示唆され,凝固学的検査から(5)の併発も示唆された.髄液検査では,細胞数159/3/cmm (28%,好中球)と増加がみられたが,細菌は分離されなかつた. prednisolone 100mg/dより治療を開始した.第7病日に(5)顕性化とともに大量出血をきたしたが, heparin,血小板輸注にて出血はcontrolされ, (3), (4), (5)は同時に改善された.しかし, prednisolone 20mg/dへの減量とともに39°C台の発熱が出現し,持続した.抗生物質大量療法に反応せず,髄液中好中球漸増より(1)の顕性化と診断し, streptomycin, penicillin G髄注を併用して下熱し,髄液所見も改善された. ampicillin皮内テスト陽性,筋生検所見,臨床経過から(1)〜(5)の存在が確定し,また(2)〜(5)の主因としてampicillin hypersensitivityを考えるのが妥当であると結論された.患者は,痴呆状態を脱し,次第に歩行可能となり,退院した.
- 社団法人 日本内科学会の論文