脳血管障害例における血液・酸素解離能と脳循環代謝との関連についての研究
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概要
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脳血管障害例における血液酸素解離能の変化の有無ならびに,その脳循環代謝に及ぼす影響につき検討する目的で以下の検討を行なつた.健常例21例,脳血管障害例30例の血液酸素解離曲線を解析し,ヘモグロビンが酸素により50%飽和される時点での酸素分圧をP50(温度37°C, pH7.40, Pco2 36.6mmHgの条件下)として測定し血液酸素解離能の指標とした.血液酸素解離能の関連因子として,赤血球内2, 3-diphosphog1ycerate,赤血球内pHの測定も併せ行なつた.また,脳血管障害例10例について脳動静脈酸素含量較差,脳酸素消費量およびCO2変化に対する脳血管反応性の測定を行ない, P50との対比において検討した.脳血管障害例におけるP50は健常例に比し,有意の高値を示し,その程度は神経脱落症状の重篤のものほど大であり,脳血管障害例における血液酸素解離能の増大が示唆された.しかしながら,この血液酸素解離能の増大は赤血球内2, 3-diphosphoglycerate,赤血球内pHの変動を機序とするものではないと考えられた.神経脱落症状の重症度が一定の症例10例においては,脳動静脈酸素含量較差および脳酸素消費量はそれぞれP50と有意正相関を示し,また, CO2変化に対する脳血管反応性は脳酸素消費量, P50のそれぞれと有意正相関を示した.脳血管障害の発症に伴う血液酸素解離能の増大は脳動静脈酸素含量較差および脳酸素消費量を増加させる方向に作用することが明らかとなり,脳循環代謝に占める血液酸素解離能の重要性が確認された.