肺高血圧症
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概要
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肺高血圧症の多くは心・肺疾患に続発するが,この場合,僧帽弁狭窄症や左心不全などの肺静脈圧上昇をきたす疾患ではそれを介して,また左から右へのシャントを有する先天性心疾患では,体循環系血圧が肺血管床に直接伝達されることにより,そして慢性肺疾患や高地環境では,ハイポキシアによる肺動脈収縮が原因となつて,さらに肺血管性疾患では塞栓による肺血管床の器質的閉塞が,それぞれ主役を演じて肺動脈圧の上昇をみると思われる.しかし,いまだにその機序がまつたく不明な肺高血圧症もいくつか存在する.そのうちでは原発性肺高血圧症が旧くから報告されていたが,近年,臨床的にそれとの鑑別が困難な肺静脈閉塞症が注目されている.また,ときに肝硬変症に合併する肺高血圧症も,いまだその成因は不明である.数年前,二,三の国において食欲抑制剤の服用と関連して原発性肺高血圧症の一時的流行をみ,薬剤や有毒食物の摂取がその原因に擬せられ,食餌性肺高血圧症なる名称も発場したが,両者の因果関係の直接的証明は不成功に終わつた.さらに,経口的な有毒物質で発症したと思われる臨床例は認められていない.しかし,動物ではある種のマメ科植物の種子から抽出したmonocrotalineにより,確実に肺高血圧症が惹起される.この場合,それらが強い肝障害作用を有することから,肺血管床への直接効果よりも,それを介するような機序が推論されている.
- 社団法人 日本内科学会の論文