冠血管予備能評価にかんする実験的ならびに臨床的考察
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概要
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冠状動脈疾患(CAD)患者の冠血管予備能評価を目的に動物実験を行ない,その成績を冠状動脈造影の際に臨床例に応用した. 17頭の開胸犬を対象に, 10秒間の左廻旋枝一時閉塞による反応性充血と,造影剤3ml冠内注入時の充血性反応を比較,両者のpeak flowはほぼ等しかつた(r=0.92).これら二つの反応の前および30秒, 1, 2, 3分後に冠状静脈洞(CS)より採血を行ない,酸素分圧(Pcso2)を測定した. Pcso2増加は冠血流量(CBF)の増加に伴つておこり,全例で30秒後の値が最高であつた. dipyridamoleの冠内投与および左廻旋枝の段階的狭窄等により作製した冠血管の種々の条件下で, CBFの増加と30秒後のPcso2の変化率が平行した.冠血管内へ造影剤注入後のCBFの増加は,冠状動脈一時閉塞時にみられるものと類似し,冠血管予備に関係している.臨床例では17例(正常7例, CAD7例, PMD3例)を対象とし,冠状動脈造影を施行した.左冠状動脈に造影剤7ml注入後に,動物実験の際と同様にCSより採血を行ない,酸素含量(Ccso2)を測定した. 30秒後のCcso2の変化率で比較すると, CAD群20±23%,対照群62±25%とCAD群で有意(p<0.05)に低かつた.左冠状動脈の基部に高度の狭窄のある例ではCcso2の増加はとくに乏しい傾向がみられた.側副血行路その他に残された問題はあるにせよ,冠状動脈造影時にCSの酸素を測定することは,冠血管予備評価を行なう際の有用な一法と考える.
- 社団法人 日本内科学会の論文